まるでホラー映画の筋書のようなことが現実に起こった。ホームレスの男性が、会ったこともない男と間違えられて不当に逮捕され、2年8か月も精神病院に収容されるはめになったのだ。
大昔のことではない。2017年のアメリカ、ハワイ州での出来事だ。
間違えられた犯人と、このホームレス男性は全く似ていない。にもかかわらず二人の写真が確認されることもなく、指紋が確認されることもなく、本人が無実だと言えば言うほど、精神病院の医師からどんどん薬を投与されるはめとなった。
ジョシュア・シュプリースターズバッハの悪夢が始まったのは今から4年前、2017年の暑い日のことだった。
ハワイ州ホノルルのホームレスシェルターの外で、食べ物の配給待ちをしていたとき、突然、警察に逮捕された。
本人は、公共の歩道で座り込んだり、寝そべったりしているのを禁止されている市の法律を破ったために、逮捕されたのかとそのとき思ったが、事態はもっと深刻だった。
2006年に起きた薬物事件の執行猶予違反で逮捕状が出されていた、トーマス・キャッスルベリーという男と間違えられたのだ。
杜撰な捜査、指紋も顔写真の照合もせず精神病院送り
シュプリースターズバッハとキャッスルベリーがまるで似ていないことなど、誰も気にかけなかったようで、ふたりの写真や指紋がきちんと確認されることなく、ホームレスのシュプリースターズバッハがキャッスルベリーだということにされてしまった。ホノルルの公選弁護人事務所の仕事ぶりは、まったくの怠慢としか言いようがなかった。シュプリースターズバッハが、自分はキャッスルベリーなどという男ではないと、再三訴えたにもかかわらず、その主張をきちんと聞こうともしない。
その供述は妄想だとして、有無を言わさず精神病院にぶちこんで、薬を投与しておとなしくさせたのだ。本人が人違いだと主張すればするほど、頭がおかしいと思われてしまった。
シュプリースターズバッハ氏が、自分はキャッスルベリーではない、無実だとと言い張れば言い張るほど、精神病院のスタッフからどんどん薬を投与される結果になった
画像左側がジョシュア・シュプリースターズバッハ、右側がトーマス・キャッスルベリー
Google検索と数回の電話で別人であることが判明
DNA鑑定によって冤罪証明を行っている非営利活動機関ハワイ・イノセンス・プロジェクトが、最近、起草した請願書には次のように書かれている。シュプリースターズバッハ氏が、キャスルベリーの犯した罪で不当に投獄されたとき、相当激高していたのも無理もない。不幸なことに、誰もシュプリースターズバッハの言うことを信じようとしなかった。やっと、ひとりの精神科医が彼の話に耳を傾け、いくつかの調査を行った。自分はキャッスルベリーではないと主張し続け、関連ある身分証明書を提出し、キャッスルベリーの出廷時に自分がどこにいたかを示したにもかかわらず、誰も彼の言うことを信じようとしなかった。
彼の身元を確認して、主張が真実であること判断するための重要な手続きをとろうともしなかったのだ
数回電話をかけ、Google検索で調べただけで、ジョシュア・シュプリースターズバッハは、トーマスキャッスルベリーが最初に逮捕されたとき、同じ島にいたことすらないことが判明した。
さらに、本物のキャッスルベリーは2016年から、すでにアラスカの刑務所に収監されていたのだ。精神科医は探偵を雇い、その探偵がそもそも最初にすべきことだったこと、つまり指紋と写真を照合して、間違った男が逮捕されたことを突き止めた。
この時点で、シュプリースターズバッハがなんの理由もなく精神病院に収監されてから、すでに2年と8ヵ月がたっていた。
謝罪なし、わずか50セントを与えただけで解放
このような大失態をやらかしたハワイ州立病院は、名誉挽回と償いのために、シュプリースターズバッハに謝罪と損害賠償をするだろうと誰もが思うだろう。まったくそんなことはなかった。指紋や写真が確認されると、病院側は秘かに会議を開いて、わずか50セント(約50円)を与えただけで、シュプリースターズバッハを解放した。
路上にホームレスがまたひとり増えても誰も気にしないだろうと考えてのことだった。
妹がずっと探していた
シュプリースターズバッハは解放されると、またホームレスのシェルターに戻った。彼の話を聞いたシェルターは、家族を探して連絡した。 実は、妹のヴェダンタ・グリフィスが、16年近くも兄を探していたことがわかったのだ。今は、彼はヴァーモント州で妹と一緒に暮らしている。また逮捕されるのではなかと怖れて、そこから離れようとしないという。
こうして冤罪が作られた
警察や病院がシュプリースターズバッハを陥れるために利用したのは、「私はトーマス・キャッスルベリーではない。そんな犯罪は犯していない。これは私ではない」という彼自身の供述だった。妹のヴェダンダは語る。「彼らは、こうした供述を兄が妄想にとらわれているせいだとして、拘束するための正当な理由として利用したのです」
ハワイ・イノセント・プロジェクトは、ジョシュア・シュプリースターズバッハの事件を詳細に記録した裁判書類を提出し、裁判官に記録の訂正を求めた。
References:Man Spends Two Years Locked Up in Mental Institution in Shocking Mistaken Identity Case / written by konohazuku / edited by parumo
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(出典 news.nicovideo.jp)
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