〈ニュース〉働きたくない妻と働いてほしい夫
専業主婦(せんぎょうしゅふ、英: housewife, homemaker)は、家事(炊事、洗濯、掃除、買物、家計管理)や育児に専業する女性のライフコースの一名称。 「働く女性(賃金労働者)」と「専業主婦」は元々対立概念ではなく、様々な理由から多くの女性が「働く女性(賃金労働者)」と「専業主婦」というライフコースを行き来する。 16キロバイト (2,460 語) - 2021年7月9日 (金) 01:58 |
30歳、ゼロ歳児の母。中小企業で働く夫の年収は500万円。しかし、夫は私が専業主婦でいることに納得してくれていた。
ところが夫は、私の友人が2児のママなのにフルタイムで働く姿を見て、考えを変えた。
「彼女のように君も働いてほしい。僕の会社だっていつ倒産するかわからない」
と頼んできた。
「でも私は働きたくないの。どうしたら専業主婦を続けられるでしょうか」
という投稿が大炎上している。もはや、専業主婦は「贅沢」な時代なのか。専門家に聞いた。
「年収500万円でも私はやりくり上手だから...」
話題になっているのは女性向けサイト「発言小町」(2021年8月7日付)に掲載された「専業主婦になったのに、夫から働いて欲しいと言われました」というタイトルの投稿だ。
「私は30歳。同い年の夫と0歳の息子がおり3人家族です。夫と交際当時OLをしていましたが、早く子どもを出産して家庭に入りたかったので、家事に専念し節約で家計をやり繰りすると夫と約束。専業主婦になりました。夫は、私の意見を聞いてくれることが多く、新居を私の実家の近くに建てるなど、今まで私の要望を叶えてくれました。中小企業勤務で年収は500万円ほど。地方に住んでいるので、きちんと節約すれば私が働かずに済むはずでした」
ところが、事情が変わった。高校時代からの友人A子夫婦宅に遊びに行った時のこと。A子の夫は有名大卒、大手企業勤務で高年収。それにも関わらず、国家資格を持つA子は、双子の男児をもうけながらフルタイムの仕事を続けており、月収が手取りで約40万円もある。そんな収入差が大きい家になぜ夫を連れて行ったのか。
「私は高年収のうえに家事育児に協力的なA子の旦那さんの姿を夫に見習って欲しいという思いがありました。ところが夫は『協力し合っているA子ちゃん夫婦の話を聞いて、やっぱり君にも働いてもらいたいと思う。コロナの影響で僕の会社も今後どうなるかわからない。家のローンや子どもの教育費のことを考えると、節約よりも家にお金を入れて欲しい。双子の育児をしながら家事と仕事をこなしているA子ちゃんを見習ってほしい』と言ってきました」
完全に裏目に出たわけだ。専門職のA子を見習えといわれても困る。外で働くのはつらいので、育児に専念して家計は節約していくと説明しても聞き入れてもらえない。どうすれば夫に専業主婦を受け入れてもらえるだろうか、と悩んでいるのだった。
この投稿には、圧倒的に多くの人が「年収500万円じゃ働かないと無理」「今の時代、専業主婦という考え方がおかしい」と回答した。
「専業主婦が夫に家事育児を手伝ってもらいたいと思うのがNGです」
「旦那さんも言っているように、コロナ禍の影響で旦那さんの会社の業績が悪くなり、減給だ、解雇だという事態に陥ったら、どうするおつもりなの? まして新居まで建てているのなら、ローンの返済だってあるだろうし、残念ながらコロナによって1馬力で安心して生計が立てられる時代ではなくなってしまったのですよ」
「今の時代、専業主婦という考え方がおかしい」
「ご主人の年収で専業主婦を養うというのが、そもそも無理。節約は心が貧しくなります。あなたが専業主婦をするために、お子さんに、他の子がしている習い事も流行りのおもちゃも我慢させますか。いまから就業して仕事を細く長く続けていれば、スキルもできて有事の際も対応できますよ。この時代、専業主婦はもはや贅沢なのです」
外で働くのが嫌なら、在宅ワークを選んだら、というアドバイスもあった。
「現在の世の中を考えると、中小企業勤務のご主人1馬力で、一生専業主婦でいられるほど、安泰ではないですよ。ごく一部の勝ち組、年収1200万円とか、1500万円以上のご主人でないと、家で茶道や華道の先生をして奥様業をしているという専業主婦はいないと思います。いずれ、働きに出るようになると思います。外で働くのがつらいのなら、在宅ワークとか内職とかでもすればいいでしょう。家庭でお惣菜ができる人なら、スーパーの総菜部で働いて、料理の腕をあげることができます。私自身、スーパーのインストアで働いた経験がありますが、修行だと思えば、どんな厳しい指導でも付いていけるし、家事の腕は上がります。私自身夕飯の支度は、30分間で4品ぐらいおかずができます」
専業主婦は、学校のPTA役員を押しつけられたりして、何かと不利だという指摘もあった。
「これから子どもは何人作るのですか。その学費はどうするのですか。また、幼稚園、小学校、中学校の役員選出も、専業主婦が一番ターゲットにされますよ。お子さんが幼稚園に行く頃になったら、周囲のママ友もセレブさんか下の子育児や親の介護で忙しい人しか専業主婦はおらず、平日外に出ても老人しかおらず、つまらなくなったり周囲との経済格差に焦ったりで、結局パートを始めそうな気がします」
ごく少数だが、「ひとりっ子なら大丈夫。専業主婦を頑張って続けては」「節約していることをアピールしましょう」といった応援エールもあった。
「共働きが増えていますが、子どもにとっては専業主婦が理想だと思います。共働きせざる得ない主婦は、お金、お金と言っていますが、シングルマザーの老後の生活保護受給者は多いですよ。平凡な母親が働いたところで、お金も家庭も壊す可能性が高いと思っていますし、お金で子どもが幸せに育つなら離婚率は下がるのでは?」
「その節約でお子さんの学費の心配がないことを数字でプレゼンできれば大丈夫。何となく節約になっているでは弱いですね」
「保育園に預けて少し働くぐらいなら、返ってマイナスになる可能性もあります。子どもが親から離されるのに、家計的に変わらないのなら何の意味ありません。旦那にそれでも働いてほしいと言われたなら、『そんな仕事があるなら見つけてきて!』と言いましょう。そして、旦那に家事育児をさせましょう。学費が2倍になるA子の双子と兄弟は全然違います。A子に相談して、A子旦那が家事をどれくらいしているか、言ってもらったほうがいい。ムカつく旦那ですね。頑張って」
「専業主婦になりたいと堂々と主張してもよい」
会社ウォッチ編集部では、今回の「夫の年収が500万円で専業主婦を続けるべきか」に悩む投稿について、女性の働き方に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに意見を求めた。
――今回の投稿と回答者たちの投稿を読み、率直にどのような感想を持ちましたか。
川上敬太郎さん「専業主婦になるか共働きするかは、ご家庭によって違ってよいのだと思います。投稿者さんが、専業主婦でありたいと願うことは意志として当然に尊重されるべきです。ただ、投稿内容を見る限りでは、ほとんどが投稿者さん自身の立場や目線からの記述になっていて、夫側の立場に立った言葉が見当たらなかったことがとても気になりました。
回答者さんたちからのコメントは厳しいものが多いようですが、投稿内容を見て、投稿者さんのわがままだと感じた人が多かったのではないでしょうか」
――投稿者は、もともと専業主婦志向が強かったようですが、じつは追加の投稿で、「OL時代に職場の上司や同僚とうまくいかず、働くことがトラウマになった」とも書いています。
回答者の中には「今の時代、専業主婦はあり得ない」と共働きが当然とする意見が多くありました。論争の背景に「専業主婦問題」があると思いますが、専業主婦はもう「時代遅れ」の存在なのでしょうか。
川上さん「社会全体では、共働き世帯の数が専業主婦世帯の2倍を超えています。しかし、数が少ないからといって専業主婦であることがダメな理由にはなりませんし、時代遅れでもありません。ご夫婦ごとに最適な形が異なるだけです。
私が研究顧問を務める、働く主婦層の実情を探る調査機関『しゅふJOB総研』で、専業主婦であることの後ろめたさや罪悪感をテーマに調査を行ったことがあります(「専業主婦であることに、後ろめたさや罪悪感はあるか?」)。調査では、専業主婦層の過半数が『後ろめたさや罪悪感のようなものを覚えたことがある』と回答しました。調査の際、専業主婦層の実情にスポットを当ててくれたという声もあれば、専業主婦であることに後ろめたさを感じる必要などあるわけないのに、こんな質問自体が失礼だという声もありました。
専業主婦世帯が少なくなるなか、専業主婦であることを後ろめたく感じてしまい、その感情を表に出せずに苦しんでいる人がいます。一方で、専業主婦になりたいことを堂々と主張できる人もいます。投稿者さんは、後者に入ると思います。
改めて言いますが、専業主婦になるか否かは、そのご家庭ごとに最適な形を選択すればよいのであって、他人がとやかく言うことではありません。一方で、自身が専業主婦であることに対する感じ方は人それぞれです。専業主婦であることに後ろめたさを感じてしまう人には耳を傾け、堂々と主張できる人についてはその意志を尊重するべきなのだと思います」
――なるほど。しかし、「専業主婦なのに夫に家事育児の協力を求めるのはNGだ」「そういう態度がブーメランとして返ってきた」という批判が多かったです。専業主婦が夫に家事協力を求めてはいけないのでしょうか。
川上さん「専業主婦であっても家事育児は大変です。また、育てるのに手がかかる子もいれば、そうでない子もいます。夫に協力を求めることも含め、それぞれの夫婦ごとに最適な形は異なります。
一方、投稿者さんは夫を自分の思い通りの方向に導こうとして友人宅に連れていき、逆に夫から想定外の要求をされるようになりました。そのこと自体はまさにブーメランと言えると思います」
「家計や家事をどうすべきか、まず夫婦で話し合おう」
――回答者の中で特に多かったのは、「夫の年収が500万円では、妻も働かないと無理だ」「節約にも限界があるし、節約は心が貧しくなる」という意見です。
川上さん「金額に対する価値観は人それぞれですし、かなえたい生活水準も人によって異なります。500万円を少ないと思う人もいれば、多いと思う人もいるはずです。大切なのは、家計全体の収入が500万円であることと、夫婦が考える生活や家族設計のビジョンが合致しているかどうかだと思います。
家事育児が夫婦2人の役割であるのと同様に、家計収入についても夫婦が共に当事者として考え、目線を合わせることが必要です。もし投稿者さんが、世帯収入500万円では少ないと感じているのであれば、足りない分の稼ぎを夫にだけ求めるのではなく、自身が稼ぐことも含めて話し合うべきです。もちろん、その際は家事育児にどのように対応するかも夫婦で話し合う必要があります。夫婦2人の役割を一方的な姿勢でどちらかに押し付けようとすると、必ず歪みが生まれることになります」
――非常に少数ですが、専業主婦の人たちからは「子どもと接していたいという気持ちはわかる」「一人っ子なら大丈夫」という応援エールも寄せられました。川上さん「専業主婦としてうまく生活していく方法をアドバイスする声やエールがあることは当然だと思います」
――川上さんなら、ズバリ、投稿者にどうアドバイスをしますか。働いたほうがいいでしょうか。それともやり繰りを頑張って、専業主婦を続けるべきでしょうか。その選択の際、何を一番大切にしなくてはならないでしょうか。
川上さん「働くかどうかよりも前に、夫との目線合わせが先だと思います。一方的に自分の言い分を主張するだけでは、そのまま専業主婦を続けようが、共働きしようが、どちらの道を選んでも上手くいかないのではないでしょうか。必ず夫婦のうちどちらか一方が不満を溜めることになるからです」
――つまり、働くかどうかより、もっと大事なことを考えなさいというわけですか。
川上さん「そのとおりです。投稿者さんは、友人夫婦のお宅に遊びに行ったことをきっかけに夫の気持ちが変わってしまったとおっしゃっていますが、もともと夫の中にあった気持ちを抑えていただけで、友人宅への訪問は単なるトリガーだった可能性もあります。投稿者さんは、どうすれば夫に専業主婦でもいいと納得してもらえるか、と質問していますが、ご自身が専業主婦を続けることを前提にしている時点で間違っていると思います。
大切なのは、家庭の共同経営者として、自らも家計収入を支える当事者の一人であることを踏まえ、互いの立場や考え方、価値観を尊重しあいながら夫婦の目線を合わせることです。夫婦が互いに納得するのであれば、年収500万円でも協力し合いながら暮らしていくことは十分可能だと思います。専業主婦を続けるかどうかは、夫婦の目線を合わせる中で決められるべきことであり、話し合う前から自身の中で一方的に決めるものではありません。投稿者さんが夫の立場を考えないのであれば、家事育児に取り組む投稿者さんの立場を夫が考えなかったとしても、責めることはできないと思います。
そして、働くことの意味についても、単に家計収入を増やすこと以上の価値があることに目を向けていただきたいと思います。職を得て経済的に自立できるようになることは、人生の選択肢を増やすことにつながります。また、人生100年といわれる時代では、やりがいのある仕事に出会えることは、生涯にわたっての生きがいを得ることにつながります。
過去のトラウマから、なかなか一歩を踏みだしにくい気持ちもあるのかもしれません。あくまで無理のない範囲を前提にしつつ、未来に開かれるご自身の可能性も含めて、仕事との向き合い方を考えてみることをお勧めしたいと思います。夫としっかりと目線合わせしたうえで、投稿者さんが仕事との新たな向き合い方を模索し、一歩を踏み出そうとしたならば、夫は最も近くにいる最も頼もしい味方として応援してくれるはずです」
(福田和郎)
(出典 news.nicovideo.jp)
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